フロイトの精神分析でとても重要な「転移と逆転移」という概念を紹介します。
1.転移とは?
転移とは、心理療法でクライエントが自分にとって重要だった人物(両親や祖父母等)に対して向けた感情や態度を目の前のカウンセラーに向ける事で、この転移には、陽性転移と陰性転移があります。
・陽性転移:ポジティブな感情(好意、尊敬、信頼等の感情)をカウンセラーに持つこと
・陰性転移:ネガティブな感情(不信感、敵意、恨み等の感情)をカウンセラーに持つこと
たとえば、
・母親(父親)に似たカウンセラーを好きになる(陽性転移)
・母親(父親)に似たカウンセラーを嫌いになる(陰性転移)
この転移は日常生活でもよくみられます。
・落ち込んでいるときに、優しくしてくれた異性を好きになる(陽性転移)
・ひどい振られ方をして、男性(女性)不信に陥る(陰性転移)
2.逆転移とは?
カウンセラーがクライアントに対して転移を起こすことを「逆転移」といいます。
「逆転移」がカウンセラーに起こっているときは、それを自覚し、振り回されることなく、思考・感情・行動を自らコントロールし、カウンセリングを行うことが大切です。
たとえば、陰性転移を起こして、怒りを向けてくるクライアントに、カウンセラーが「○○さんのカウンセリング嫌だなあ」と思った場合
カウンセラーは陰性転移をしています。
3.どうして「転移」が起こるのか?
転移をおこしているクライアントの場合、カウンセラーはクライアントにとって、人間関係を再構築させるための対象となります。
社会では通じないワガママをやさしく聞いてくれるカウンセラーとの関係は親子関係と似ています。カウンセラーを通して親をみているのです。
4.「転移」は必要なものか?
転移は、幼い頃に満たされなかった親などに持っていた感情や態度を(「もっと甘えたかった」「もっと大切にしてほしかった」など)をカウンセリングにおいて再体験していることです。
その抑圧した感情は、思い出したくないものであったり、苦痛を伴うものであったりします。
その幼いころに閉じ込めてしまった無意識の感情にスポットを当てていくことは、「生きにくさ」の解消につながる重要なものなのです。
5.まとめ
転移や逆転移が起こった場合、
「なぜその感情が出てきたのか」
「その感情は、過去、誰に向けられた感情と同じものなのか」
を意識していくことが大切です。
転移も私たちが環境に適応し、生きていくために身に着けた心のくせであり、私たちを守ってきてくれたものです。でもその転移が日常生活で「生きにくさ」を感じているものなら、もう大人になった私たちには必要のないものかもしれません。
転移は小さい頃に得られなかった体験を、カウンセリング場面で取り戻しているだけです。そして転移を起こさなくても、問題は生じないということをカウンセリングを通して体験していきます。
そうすることで、自分との間で抱えていた葛藤や苦悩が和らいでいき、生きやすい人生へと変化していきます。
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